東京地方裁判所 昭和58年(特わ)699号 判決 1983年7月11日
裁判所書記官
久保田堅蔵
(被告人)
(一)本店所在地
東京都品川区荏原四丁目一二番一一号
東光サービス株式会社
東京都品川区中延四丁目七番九号
右代表者代表取締役
堀切慶治
(二)本籍
東京都品川区小山二丁目一六二番地
住居
東京都品川区西五反田一丁目四番八-一二〇一号
会社役員
泉勝
昭和一五年五月六日生
右両名に対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は検察官五十嵐紀男出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
一、被告人東光サービス株式会社を罰金一三〇〇万円に、被告人泉勝を懲役八月にそれぞれ処する。
二、被告人泉勝に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人東光サービス株式会社(以下被告会社という。)は、東京都品川区荏原四丁目一二番一一号に本店を置き、電子機器部品の輸入販売等を目的とする資本金二〇〇〇万円の株式会社であり、被告人泉勝は被告会社の取締役かつ実質経営者として被告会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人泉勝は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て架空・水増仕入を計上したた卸商品の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和五四年二月一日から昭和五五年一月三一日までの被告会社の事業年度における実際所得金額は五九八八万三二八九円あった(別紙一の一修正損益計算書参照)にかかわらず、法定納期限である昭和五五年三月三一日東京都品川区中延一丁目一番五号所在の所轄荏原税務署において同税務署長に対し、その所得金額が三七五九万四七一一円でこれに対する法人税額が利子配当等の所得税額を控除すると一三七四万八五〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書(押収にかかる昭和五八年押第九一四号の一)を提出し、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二二六五万八六〇〇円と右申告税額との差額八九一万〇一〇〇円(別紙二税額計算書参照)を免れ、
第二 昭和五五年二月一日から昭和五六年一月三一日までの被告会社の事業年度における実際所得金額が一億〇五〇二万二八八一円あった(別紙一の二修正損益計算書参照)にかかわらず、法定納期限である昭和五六年三月三一日、前記荏原税務署において同税務署長に対し、その所得金額が五九二四万六〇八五円でこれに対する法人税額が利子配当等の所得税額を控除すると二二二五万三八〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書(前同押号の三)を提出し、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四〇五六万円と右申告税額との差額一八三〇万六二〇〇円(別紙二税額計算書参照)を免れ
第三 昭和五六年二月一日から昭和五七年一月三一日までの被告会社の事業年度における実際所得金額が一億二二七四万一七一四円あった(別紙一の三修正損益計算書参照)にかかわらず、法定納期限である昭和五七年三月三一日、前記荏原税務署において同税務署長に対し、その所得金額が七六五六万九六〇六円で、これに対する法人税額が利子配当等の所得税額を控除すると三〇二八万八二〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書(前同押号の四)を提出しもって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四九六七万七六〇〇円と右申告税額との差額一九三八万九四〇〇円(別紙二税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
一、被告人泉勝の当公判廷における供述並びに検察官に対する供述調書二通
一、登記官作成の登記簿謄本
一、大貫昌明、西尾保三、堀切慶治の検察官に対する各供述調書
一、伊藤文夫の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、押収にかかる法人税確定申告書四袋(昭和五八年押第九一四号の一ないし四)
一、大蔵事務官作成の調査書一五通
一、荏原税務署長作成の証明書
一、検察事務官作成の報告書二通
(法令の適用)
被告会社の判示各所為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一、二項に、被告人泉勝の判示第一、第二の各所為はいずれも行為時において昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一、二項に、裁判時において右改正後の法人税法一五九条一、二項に、同被告人の判示第三の所為は右改正後の法人税法一五九条一、二項にそれぞれ該当するところ、被告人泉勝の判示第一、第二の各罪は法律により刑の変更があった場合であるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、被告人泉勝の以上の各罪につきいずれも懲役刑を選択し、被告会社、被告人泉勝の以上の各罪はいずれも刑法四五条前段の併合罪であるから被告人泉勝の懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最重の判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、被告会社については同法四八条二項の合算額の範囲内で、被告会社、被告人泉勝を主文第一項のとおりの刑に処し、被告人泉勝については情状により刑法二五条一項を適用し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
(量刑の事情)
本件犯行は顧客先に対する簿外の交際費や被告会社の本社ビル建設の資金蓄積のため被告人泉勝が取引先と通謀して架空仕入を計上したり海外の子会社からの水増仕入を計上したり、更には決算期にたな卸を除外する経理操作を行い起訴された三事業年度で合計四六六〇万円余の法人税をほ脱していたものでその正規税額に対するほ脱割合は約三九パーセントないし四五パーセントに達しており、被告会社ではこのような方法による法人税ほ脱を昭和五三年一月期から続けこの間昭和五五年一月期には所轄税務署から調査をうけたな卸除外について指摘を受けたにかかわらずその後も同様の所得秘匿工作を続けてきたものであること、しかしながら被告人泉勝及び被告会社関係者は本件について反省し、本件各事業年度分について修正申告をなし、本税、重加算税、延滞税及びこれに伴う地方税について全て納付済みであること、その他本件に顕れた一切の情状を総合考察し、主文のとおり量刑した次第である。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 池田真一)
別紙一の一 修正損益計算書
東光サービス株式会社
自 昭和54年2月1日
至 昭和55年1月31日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙一の二 修正損益計算書
東光サービス株式会社
自 昭和55年2月1日
至 昭和56年1月31日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙一の三 修正損益計算書
東光サービス株式会社
自 昭和56年2月1日
至 昭和57年1月31日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙二
税額計算書
東光サービス株式会社
<省略>